2011年3月11日に東日本をおそったM9.0の巨大地震とそれに伴う大津波は,私たちがこれまでに経験したことのない甚大な災害を東北・関東地方にもたらしました。この災害で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに,被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。さらにはこの地震と津波により東京電力の福島第一原子力発電所の諸施設に極めて深刻な被害が発生し,発電施設はもとより周辺の広い地域にわたって危険が及ぶような状況が続いています。被災地の一刻も早い復興と,原子力発電施設の危険な状況が早急に改善されることを願ってやみません。
復旧・復興作業が急がれる中で将来のことを語るのはまだ早いかもしれませんが,このたびの福島での事故は,当事国である我が国はもちろんのこと,世界の至る所で今後のエネルギー政策に関する議論が巻き起こることは必然です。現代文明に必要なエネルギーをどう確保するか,という極めて重要な課題が人類全体に突きつけられているといえましょう。
電気化学は,電気エネルギーの有効利用のみならず,発電や蓄電のための高効率デバイスの基盤科学という観点から,今日のエネルギー問題と深く関わる学問分野です。実際,太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを補完するための蓄電池や燃料電池の技術は将来のエネルギー体系の重要部分を占めると期待されています。このたびの原子力発電所の大きなトラブルによってエネルギー分野における電気化学の役割はよりいっそう高まってくるものと思われます。
本年は,電気化学会九州支部が発足して50周年にあたります。支部では見学会や講演会などの恒例の事業に加えて記念事業を計画しております。さらには電気化学会が公益法人に移行することもあり,学会における支部の役割についてもあらためて確認する機会にしたいと思っております。皆様のご支援を賜りたくよろしくお願い申し上げます。
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